2013年4月9日火曜日

大学卒業要件にTOEFL90点?〜学生の憤りと政策形成のジレンマ

昨晩、あるニュースがありました。
「大学入試にTOEFL義務づけを」 首相に自民提言
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/TKY201304080323.html
表題には出てないのですが、TOEFL90点を大学卒業要件にする提案もされています。

Facebookでの学生の憤り

これについてFacebookで主に後輩たちが憤っていました。

まず、
Sorry for keep posting. But I just couldn't stand it. これ委員会を通ったって事は本当に実行される可能性があるってことでしょ?このトップ30校がどの大学をさしているのかわからないけど、卒業要件にTOEFL90は無茶でしょ。そして、でも英語教員は80で良いという矛盾。

という投稿。これに対して、
曖昧な表現「グローバル人材」 
確かにTOEFL90を卒業要件にするのは厳しい 
アホ過ぎ。ほんとアホ。自分たちの学力を90超えさせてから考えるべき。何を思ってるんだろう。 
おっしゃる通り。この現場感のなさ。 
まずは国会議員全員にTOEFLを受けていただいて、それから話を進めるべきだと思う。
てかこれ実現したらETSがめっちゃ儲けることになるんだろうね。個人的にだけど、ETSが国にロビイングして実現させようとしているような気がしなくもない笑
…という勢いで30分もしないうちに総スカンになっていました。

政策形成の枠組みと「高めのボール」のジレンマ

このニュースを受けて、憤る前にもちろん実行される可能性はあるものの、どういう過程で実行に移されるのかということを落ち着いて考えてみること、そもそも教育再生実行本部って何?ってところから考えてみる必要があります。

教育再生実行本部、教育再生実行会議、文科省の関係や立法・改革実行の枠組みについては下記の共同通信47ニュースに詳しいです。

【Q&A】安倍政権の「教育再生実行会議」って?

出典:上記47ニュースより

つまり、今回は教育再生実行本部からボールが教育再生実行会議に投げられたことになります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/教育再生実行会議
教育再生実行本部は国会議員が中心のようですが、教育再生実行会議にはWikipediaを見る限り多くの民間の方、教育現場の方が入っているようです。ここでもう一度、議論がし直されて、現実的な案になることが予想されるので、あえて実行本部は高めのボールを投げたものと思われます。

「政策形成過程で折り合いができてくるものだから、政策提言は高めのボールを投げるのが鉄則」とタムコー先生もおっしゃっていましたが、こうして提言段階で高めのボールを投げたのが報道されて世論に反発されると、さらに推進力が落ちてしまうという政策実現のジレンマがあるように思います。

党の内部機関が提言ということなので、これからどう具体的に制度設計、実行がされていくのか、ということに目を向けると、教える側の能力など考えて、妥協して80くらいになるんじゃないか、などと考えることもできます。

TOEFL90は高すぎる、議論してる国会議員はそれくらいできるのか、という声については、中国・韓国のトップクラスの大学は大学平均でそれくらいあると思われるので、それくらい目指さないといけないとは思います。学生が抵抗勢力になってどうする。もちろん、卒業要件にする、という制約はきつすぎると思いますが。

現実的代案とその付帯条件

卒業要件、という形であればトップ大学、30校は多すぎる気がするので、
旧帝大、一橋東工大、早慶上智ICU、あと秋田の国際教養大学あたりを15〜20校くらい指定して、卒業要件としてTOEFL80、TOEFL90取れたら2単位、100取れたら4単位追加であげるくらいはどうでしょうか。

もちろん、取るための補助金もセットで。前回の記事でロバートフェルドマンさんが「医療費を5%削減して毎年40万人海外留学させろ」と言っていたことを紹介しましたが、TOEFL80取るための海外留学促進、また英語学習の援助の仕組みを合わせて作ってもらわなければならないと思います。

ETSに金が流れるのが問題なのであれば、開発費をきちんとかけて日本でテストを開発するべきです。ただ、TOEFLというテストはなかなかよくできていて、あれを真似る形になるとは思いますが、それで問題にはならないんでしょうか。
リーディング・リスニングはマーク式で自動採点するとしても、ライティング・スピーキングを日本人がどう採点するんでしょうか。そこでまた外国人雇うんでしょうか。リーディングで使う教材は無料で使えるんでしょうか。開発費をかけて開発し、外国人を雇って採点してもらうことのコストとどちらが高くつくか。TOEFLは割といつでもどこでも受けられる便利さがありますが、それを確保できるのか。
それらに突っ込んだ議論が早急にされるべきだと思います。

追記:上智大学と日本英語検定協会が共同開発したTEAPテストというものがあるそうです。これが普及するでしょうか。
http://toyokeizai.net/articles/-/12124

最後に

加藤嘉一さんの新連載がダイヤモンド・オンラインで始まりました。
「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ
http://diamond.jp/articles/-/34416

是非ご覧になってください。

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